きねぞう

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映画評:【秘密の花園】誰もワタシを止められない。

 

小さい頃からお金が大好きな鈴木咲子は、学校を卒業すると銀行員に就職。しかし銀行強盗に襲われ、咲子は人質として車に詰め込まれてしまう。車は富士の樹海まで逃走したが横転事故を起こす。幸いにも一命をとりとめた咲子は、皆から祝福されるが、彼女の頭は一つのことで一杯だった。樹海の湖に取り残された、現金5億円の行方のことで……。

 

現金5億円を獲得するため日夜奮闘する姿を描く、ブラッコメディの傑作。樹海へ探検するために、地質を学ぶべくまずは専門の大学を受験しよう、という突飛すぎる主人公の発想が面白いですね。それから受験勉強をするためにアパートを借り始め、さらにフィジカル面でも、登山や湖の対策として、本格的なロッククライミングを始めたり、プールに通い詰めたりと、主人公の行動はアグレッシブを極めます。

このように飛躍しすぎた行動に出るという可笑しさがストーリーの肝ですが、僕が何よりもこの映画で魅力を感じるのは、主人公が常に一つの目標に向かって迷いなく前進しているということです。

大学で勉強するのは、単位のためでも、就職のためでも、ましてや趣味的な研究目的でもなく、実際に知識を活用するためであり、これこそが、もっとも学問に対する尊い姿勢ではないでしょうか。

彼女は両親や世間の目などまったく気にも留めず、ひたすらに自分の目的に熱中しています。一体、世の中に自分のやりたいことが明確にあり、それに向かって淀みなく邁進できている人はどれだけいるのでしょうか。彼女はとても人生を謳歌しているように感じました。他の登場人物たちも、主人公に感化されるようにして、自分のやりたいことや才能を見つけていくのがとても素晴らしい。

この作品は、ナンセンスに飛躍していく主人公の突拍子の無さをウリにしたコメディなのだけれど、その芯には人間の生きるエネルギーというか、躍動する人間の心地良い生活のリズム、熱量の爽快さが通っていると感じました。

 

75点