きねぞう

映画の感想や関連記事を載せていくブログです。

映画評:【闇の歯車】テレビドラマみたい。

 

横浜駅近くにあるムービルという映画館が「109シネマズ会員1,100円キャンペーン」をやっている。どの時間帯でも性別年齢問わず会員カードを持っていれば1,100円で映画が観れてしまう。そのキャンペーンがいつまで経っても終わらない。終了間際になったら期間を延長する、を何度か繰り返していて、これは当分続きそうだ。

だから最近、映画を観る時はだいたいこの劇場を利用させて貰っている。設備が古いから、スクリーンも音響も座席も大したことはないんだけど、映画に没入しているとあんまり関係ないのかなとも思う。もちろん、IMAXや4DXで映画を観るのも僕は大好きだ。

 

そんな訳で今日はムービルで公開されていた「闇の歯車」を紹介したいと思う。

ポスターを観て面白そうだなと気になってはいたんだけど、二週間くらいしか公開期間がなかったから慌てて観に行った。

お話としては、悪漢たちが活躍するサスペンス時代劇。

世間からどこか見放されてしまった、生活に困窮する男たちが何の気なしに集まる居酒屋。その中の一人の老人が、そこで集っていた男たちに押し込み(強盗)をしないかと持ち掛ける。

怪し気なこの老人役を橋爪功が演じているんだけど、これが凄くハマっている。

いつもニコニコしながら好々爺然と近づき、男たちに悪事への荷担を迫る様子は、悪魔のようでもあり、破滅をもたらす死神の様にも映る。老練であり、ミステリアスでなかなか底を見せない。仕事が終わった途端に急に態度が横柄になるところも含めて、とてもキャラが立っていた。

瑛太が演じる主人公のチンピラも含めて、他の俳優たちの存在感はなかなか良かった……。

が、

お話がまったく盛り上がらない……。

夜ではなく、夜になる直前の日暮れ時、逢魔が刻と呼ばれる瞬間を狙って押し込みを決行するというアイディア自体は悪くないものの、それ以外の要素の詰めが甘い。

男たちはそれぞれ一芸に秀でており、それを見抜いた老人が彼等を引き抜くんだけど、各人の見せ場みたいなものがハッキリ描かれない。皆で居酒屋の屋根裏で計画を練る場面とかも、軽い打ち合わせに留まっているし、押し込みを実行する場面も緊張感なく淡々と進んでいく。この映画が一番面白く描くべきサスペンスの描写や演出がすごく希薄。だからその前後にある人情ドラマみたいなのが大半を占めていて、テレビドラマを見せられているようだった。

押し込みに成功した男たち。だが、一人、また一人と破滅の運命を迎える。その展開は分かるのだが、彼らがどうしてそうなってしまうかの理由が、押し込みをした事と一切関係ないのだ(一人を除いて)。それは彼等が以前から抱えていた事情とか問題の帰着なので、結局、彼等は何もしなくても自滅していただろうということが分かる。

それはそれでせつない、という見方もできるかもだけど……。

rating:40点

 

ではまた。