きねぞう

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映画評:【パーフェクトブルー】「私は本物だよ」

 

ローカルアイドルグループ『チャム』に所属する霧越未麻は、事務所の強引な方針によりグループを脱退し女優へと転身する。しかし、アイドル時代への未練を強く残していた彼女は、成功とは裏腹に、次第に精神的に追い詰められてゆく。やがて現れるもう一人の未麻。これは幻覚なのか、現実なのか。さらに彼女の周囲で次々と起こる惨殺事件に、未麻は、自分が殺人鬼ではないかと恐怖におののき……。

 

竹内義和の小説『パーフェクト・ブルー 完全変態』を原作としたサイコサスペンス。 ストーカーやインターネットをいち早く作品内に組み込み、また現実と虚構の交錯というテーマも当時は先鋭的であったため、数多くの作品に影響を与えています。原作の小説からは一部の要素だけを抜き取って大胆な変更を行ったようですが、作品内の劇中劇「ダブルバインド」と現実世界が混ざり合った感覚に陥ってしまうという主人公の精神世界を、映画的に上手く繋ぎ合わせ描写している所が秀逸。殺人事件の謎と同時に、未麻が本当の自分を取り戻そうとする物語が抜群に符合しています。        

 

写実的なアニメーションはクオリティが高く、今観ても鑑賞に堪えうる魅力を放っています。人物の表情も素晴らしく、未麻がいつもの不安な表情から、女優の演技へと表情を切り替える、その変化を滑らかに描いているのが印象的でした。またそのリアルな描画によって残酷描写やレイプシーンなども盛り込んだ意欲作という位置づけも出来るのではないでしょうか。

作品内で流れるオリジナルの挿入歌もどれも良く出来ています。曲調と歌詞に、いかにも二流アイドルが歌っていそうな説得力がある(笑)。

さらにエンディング曲である「season」は、甘酸っぱく爽やかな曲で、物語全編に漂っていた陰惨な雰囲気を吹き飛ばすような清涼感を持っており、この落差もたまらない魅力ですね。

 

72点