映画評:映画を観る意味とは【ナイトクローラー】
こんにちは。
杵蔵(きねぞう)です。
個人的に大切な一作です。
ロサンゼルスの夜の風景をダークに切り取っており、雰囲気がたまりません。
個人的には、エドワード・ホッパーの「ナイトホークス」を連想しました。
ナイトクローラー
制作:2014年/アメリカ
監督:ダン・ギルロイ
出演:ジェイク・ジレンホール
:レネ・ルッソ
:リズ・アーメッド
:ビル・パクストン
:アン・キューザック
rating:85点
ストーリー
学歴も人脈もないために仕事に困窮していたルイス。たまたま自動車事故の現場に遭遇した彼は、現場の撮影を始めるカメラマンの姿に触発され、自らもパパラッチを始めてみようと思い立つ。特ダネを収める事が出来た彼は、テレビ局に映像を売り込む事に成功。やがて、より刺激的な映像を手に入れようと、ルイスの行動はエスカレートしていき……。
レビュー
ロサンゼルスを舞台に、災害や犯罪の現場に急行し、危機に満ちた撮影に奔走していく男の姿を描くサスペンス映画の傑作。
例えば交通事故の現場を通りかかったとき、火災が発生した建物に目が留まったとき、思わず立ち止まってしまい、まじまじとその光景に魅入ってしまった経験は無いでしょうか?否定しがたい事に、私たちは非日常的な事件に飢えているし、心のどこかで「それを見てみたい」という欲求を捨てずにはいられない。
テレビの視聴者は映像を見て、現場に残された血や破壊の痕跡を辿りながら、そこに凄惨な臭いを嗅ぎ取り、物語を類推していく。「恐ろしい」、「残酷だ」と呟きながら、自分の身は映し出されているテレビの外側、すなわち安全圏に居るのだという立場に心底安堵する。そこに潜在的な幸福を見出してしまうことがある。
本作は、そうした人間の性質に深く切り込みながら、顕在化された観客の願望と、主人公の「もっと、もっとスクープを!」とカメラを回す姿勢が映画的に見事にリンクされていると感じました。
そして同時に、まるで取り憑かれたかのような、呪われたようなその執念を、俯瞰した視点でもって静かに見つめている。ある意味羨ましいとさえ感じるほどに、主人公は己の「やりたいこと」を発掘し邁進していくのが印象的でした。
主人公は他人の痛みに無頓着なサイコパスですが、やる気だけは人一倍あり、過剰な行動力でスクープをモノにしていくのは、観ていて清々しさすら感じます。
衝撃的な映像を見たい、誰かの破滅の瞬間に立ち会ってみたい。私は、それを不健全な願望だとは思いません。人間の生理として道理だとすら思います。そして、それを解決する術は既にあります。
それは映画です。
誰かの人生に入り込み、未知の世界を類似体験していく。それが、人生をより豊かにしてくれると私は強く信じていますよ。
ではまた。