きねぞう

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映画評:【IT リメイク版】やっぱりホラーは“心の友”なり。

 

子共だけを狙った連続殺人事件が発生している、メイン州にある田舎町・デリー。“それ”の魔の手によって、幼い弟を亡くしたビルは、彼を救えなかったショックから抜け出せないでいた。ある日、ビルは自分と同じ様に心に傷を抱え、孤立していた少年少女達と出会い、交流を深める。そして、彼らは“それ”の正体を暴き打倒するべく、事件究明に乗り出す……。

 

原作はスティーブン・キングの同名小説であり、既に1990年に映画化された「IT」のリメイク版。

IT=“それ”の正体であり恐怖の象徴である、不気味なピエロ、ペニー・ワイズ。オリジナル版では画面から浮き出て見えるほどのインパクト、恐怖を煽る違和感を湛えており、この点だけを新旧比較した場合、どうしてもオリジナル版に軍配が上がってしまうものの、それ以外の要素、映像、脚本、音楽、演出、全てにおいて、このリメイク版が圧倒しています。

少年時代のみを抽出し、物語を秀逸に再構築、青春映画としての郷愁的な空間を生み出すことに成功。スプラッター描写はより過激になり、オリジナル版を観ていた人でも度肝を抜かれる展開のつるべ撃ちで、良い意味で観客を裏切り続けてくれます。

以下、余談になるがどうしても書いておきたい事があります。僕が本作を映画館で鑑賞したとき、隣席は中学生くらいの女の子でした。彼女は、怖い場面が来る度に顔を手で覆い、そして指の隙間をちょっぴり開き、恐る恐る、スクリーンを見詰めており、その姿を横目にしていた筆者は形容しがたい甘酸っぱさとノスタルジーの激流に打ちのめされてしまいました。

上映が終わり、劇場を見渡すと、観客のほとんどが10代から20代の若い男女でした。普段は映画を観るような雰囲気ではない彼等の、興奮に満ちた表情。それがまるで、スプラッター映画において、呪われた村に近づくなという忠告を無視し殺されていく、あの無軌道な若者たちの表情と重なったのです。

この感動。やっぱり、ホラーは心の友ですね。

 

71点