きねぞう

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映画評:【3時10分、決断のとき】登場人物が全員アホ

 

本作は1957年に公開された「決断の3時10分」をリメイクした西部劇映画。各所で高評を得ているようだけど、僕は全然ノレなかった。登場人物が全員アホ過ぎて感情移入できないからだ。

 

その① ギャングがアホ

早打ちのガンマン、ベン・ウェイド(ラッセル・クロウ演)が率いる無法者たち。大金を乗せた駅馬車を襲うが、下手過ぎ。遠くから狙撃する奴が居るとか、物陰から急襲するとかすればいいのに、だだっ広い荒野の中、強盗団は正々堂々前から突っ込んでいく。で、案の定迎撃に遭って仲間が何人かやられてしまう。その後になって、ベンが牛の大群を馬車の前に誘導して進路を妨害するんだけど、最初にそれをやっておけば被害が少なくて済んだのでは?

襲った中に居た生き残りに、「お前はまだ生かしておいてやる」とベンはそいつを見逃す。何か利用価値があるのだな……と思って観ていても、そんな展開は一切ない(その後、ベンは母親を侮辱された事で激昂し、そいつを殺してしまう)。

馬車を破壊し、金庫の金にありつく一同。が、不覚にも仲間の一人が人質に取られてしまう。するとベンは人質ごと敵を射殺してしまう。

「被害は最小限にしなければならない。彼は油断していたから死んだ」

冷徹に仲間に説くベン。だが、その後町の酒場で女と懇ろになるベン。強盗の件は自発的にバラしたため保安官が近くを嗅ぎまわっているにも関わらず、酒場でゆうゆうとくっちゃべっている。そのおかげで、ベンは一人、捕まってしまう。

その言葉、お前にそのままそっくり返してやりたい。

しかもベンが捕まっている最中、部下の一人に「油断したから捕まったんだ。あいつが言ってたんじゃないか」と指摘されている始末。副リーダーがベンに狂信的であったため、彼を奪還すべく動き出すのだが、この時点でリーダーのカリスマ的な設定には説得力が無い。

 

その② 護送団がアホ

捕まえたベンを公開処刑にするため、3時10分発の汽車に乗せようと、彼を護送する一同。まず、ベン・ウェイドは極悪人で有名であり、ギャングたちが彼を奪い返しに来ることは想定している筈なのに、人数が少ない。5、6人しか居ない。「七人の侍」とか「十三人の刺客」とか、人数の少なさにやむを得ない要素があればサスペンスになるんだけど、保安官が携わっているんだから、もうちょっと何とか出来るはずだ。ちなみにオリジナル版では、賞金200ドルで護送を募集するが、ベンの恐ろしさからみんなが尻込みしてしまい、人数が集まらないという描写があるらしい。この描写を何故省いたのか、理解に苦しむ。

で、ただでさえ人数が少ないのに、ベンの拘束がちゃんとしてない。夜、みんなが寝ていると、一人保安官がベンに殺されてしまう。その後、馬に一人で乗っけて移動させていると、あっさり銃を奪われ、また一人殺されてしまう。もっとちゃんと縛って、馬の尻に乗せるとか鉄の柵に閉じ込めるとかしようよ。レッド・デッド・リデンプション2ではそうしてたよ。

そもそも、「3時10分発の汽車に乗せればオッケー」という発想が既におかしい。汽車に乗せたとしても、その汽車が止められてしまったり、到着駅で待ち伏せされる可能性もある。高い塀のある堅固な刑務所、とかなら手が出せないなと分かるけど、汽車なら余計危ないのでは、とすら思う。勿論、「3時10分」というタイムリミットを設定したいのは分かるけど、もっと展開に必然性を持たせて欲しい。

 

その③ 町民がアホ

汽車の時間がくるまで、宿で籠城する一同。ところが居所がバレてしまい追い詰められてしまう。ギャングの副リーダーは、町民に「護衛を殺してくれたら200ドル払う」と言うと、何十人もの町人が銃を手に取り、護送団を襲い始める。ちょっと待ってほしい。ゴロツキしかいないような貧民街ならともかく、文明化が進んだそこそこ大きな町で、そっち側に寝返るような人間がそんな大勢居るとは思えない。200ドルが大金とはいえ、ここでギャング側に着くようなことをすればお尋ね者の仲間入りなのに。皆が金に困って殺伐としているような描写が無いので、単純に嘘臭く見えてしまった。

 

ということで、登場人物は全員アホでした。ラッセル・クロウとクリスチャン・ベールという、素晴らしい名優たちの共演を観れたことだけが唯一の救いでした。

 

40点