きねぞう

映画の感想や関連記事を載せていくブログです。

映画評:【カメラを止めるな!】今更だけど、やっぱりおもしれぇ!

 

完全に時期を逸した……。

公開から大分経ってしまった後で、こんな記事を書いてるなんて。

きっと、様々な所でこの映画の評がされているかと思う。別に僕なんかが改めて映画評をする必要も無いんだろうけども、書いてしまったんだからしようがない。

 

 

89点

自主映画製作のスタッフが、山奥の廃墟でゾンビ映画の撮影をしていた。本物志向の監督はなかなかOKを出さず、テイクは重なってゆく。途方に暮れる俳優や撮影隊たちだったが、なんとそこに本物のゾンビが現れ彼等を襲い始める。危機に瀕した状況であるにもかかわらず、監督は大喜びでカメラを回し続ける……。

都内2館の上映から口コミで話題が広まり、200万人を超える観客動員を記録した異例のヒット作。

観客が最初に目にするのは37分のゾンビ映画。廃墟で映画撮影をしているスタッフたちが本当にゾンビに襲われてしまうという筋書き。ワンシーン・ワンカットの手法は斬新だし、所々のシュールな展開にも面白味が無いとは言わないが作品としては陳腐の範囲を抜け出せていない。僕も含めた多くの観客は肩透かしを食らう。

ところがその作品の幕が閉じると、時系列が前に戻り、映画撮影の経緯が語られてゆく。主人公である映画監督の視点を中心にして、作品の企画が立ち上がっていく過程、この作品がテレビで生放送されるという事実が明らかになる。いわば、謎解きにおける解答編が提示される訳だ。そして本番、オンエア直前に起きたアクシデントによって、監督自らが主演を務めるという事態に陥り、その他にも様々な問題が立ち上がるが、それも監督やスタッフ、演者たちの知恵と機転によって乗り切ってゆく。

それにより、最初に作品を観て感じた、違和感や疑問が次々と氷解してゆくばかりか、抱腹絶倒のコメディへと見事に転化する。作り手たちの事情や思惑を知ってからその作品をもう一度観ることで、バラバラだったピースが綺麗にはまってゆく快感を味わうことが出来るのだ。

それだけでなく、主人公の監督をはじめ、作品を絶対に成功させると息巻く彼等の人間ドラマがきちんと描かれていることで、物語の秀逸な構造が、より強化されている所も本当に素晴らしい。映画を作る人々の情熱、「映画愛」をひしひしと感じ、その姿を見ているだけで嬉しくなってしまう。それと、やっぱり日本でのゾンビ映画の認知がされてきたからこその傑作に繋がったのだと思う。映画の最大の武器とも言える“視点”というものを、これ以上ない程にまで磨き上げた奇跡の傑作。