きねぞう

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映画評:ヒュー・ジャックマンは冷たいヤツ?【グレイテストショーマン】

 

 

こんにちは。

杵蔵(きねぞう)です。

 

普段あまりミュージカルは観ないのですが、時間があったので観てきました。

 

 

グレイテストショーマン

製作:2017年/アメリカ

監督:マイケル・グレイシー

出演:ヒュー・ジャックマン

  :ザック・エフロン

  :ミシェル・ウィリアムズ

  :レベッカ・ファーガソン

  :ゼンデイヤ

rating:60点

 

 

ストーリー

19世紀アメリカ。貧しい生活を続けながらも、人を楽しませることに長けていたバーナムは、世界中のあらゆる奇妙なものを展示した「バーナム博物館」をオープンさせる。ところが客足は芳しくなく、経営は困難な状態に。ある日の夜「死んでいるものじゃなくて、生きているものが居た方が面白いのに」という幼い娘の何気ない言葉からヒントを得たバーナムは、奇形児や障がい者を集めたサーカスを思いつくが……。

 

レビュー

実在した興行師P・T・バーナムの成功を描いたミュージカル映画。

開幕直前、20世紀フォックスのオープニングに割り込むようにテーマ曲「The Greatest Show 」が流れ、いきなりテンションは最高潮。

既にこのオープニングだけで5億点、出てます。

興奮していると、時は遡りバーナムの少年時代へ。貧しい生活の中にある夢や恋、そして後に興すサーカスへの伏線など、1つの曲を通して滑らかに語ってゆく。色使いがとても綺麗で、機関車の蒸気や、洗濯物のシーツといった個々のアイテムの使い方も上手い。

その手際の良さ、感性が、映画としての快楽に満ちていて、「ミュージカルってすごいな」と、遅まきながら感心させられました。

しかし、この冒頭の盛り上がりが落ち着き、ストーリーが進んでいくと、少しずつこちらの興奮が冷めてゆくのが印象的でした。それは、主人公であるバーナムへの感情移入が薄くなってしまったからではないかと思っています。

劇作家のフィリップが登場してから、人間ドラマはスプリットされてしまい、そのどちらも上手く機能していないように感じました。そもそも評判ゆえスカウトされた筈なのに、フィリップが才能を発揮させるような見せ場が無いので、サーカスの役に立っている感じがしないんですよね。

バーナムは、ジェニーという高名な歌手との共演に成功し、上流階級への交流を広げます。そんな彼らのパーティに、サーカスの芸人も混ざりたそうにやってきますが、バーナムは彼らをていよく追い払ってしまう。

ここは成功を掴みかけているバーナムのエゴを描く興味深い場面なのですが、その後が問題。この、彼らを邪慳に扱った件というのは、後の展開に全く生かされない。バーナムが反省し、彼らと友情を取り戻すハッキリとした描写がないまま、ただ不問にされてしまう。そして、芸人たちは、どんなに自分たちの姿が醜くても堂々とするべきだ、とパーティ会場に乱入する。

つまり、バーナム抜きに、彼らが成長してしまっている。バーナムと芸人たちが呼応して変化していかないのです。

これはドラマとして勿体ないだけでなく、バーナムに対して不信感を抱いてしまうイヤな演出にしかなっていません。

芸人達と言えば、彼らの描き方も不十分。

彼らは一芸に秀でているというよりかは、見た目が変わっていたりする人達ばかりなので、サーカスに必要な歌や踊りの訓練が必要な筈なんです。ところが矯正や特訓シーンもなくいきなり公演出来てしまうので違和感があります。練習場面なども彼らならではの見せ方などして面白くできただろうに。奇形児や障がい者の扱いについても、もう少し現代的な解釈があってもいいんじゃないかと思いました。

この映画の最後まで、バーナム(成り上がり)と、芸人たち(まがい物、偽物)は真に打ち解けあっていない気がするんですよね。もしかたら故意にかもしれないけれど。何故って、公演はフィリップに任せて、自分は令嬢の奥様と一緒に、娘のバレエ(バレエという『本物』)を観てるだなんて……。

 

オープニングにサーカスのミュージカルを入れることで盛り上がることは盛り上がりましたが、そのせいで最大のエモーションは序盤に使い切ってしまい、彼らが初めて人前で公演する場面にカタルシスが薄まってしまった所も難点ですね。この配分も、どうしたらいいか悩ましい所ですけどね……。

とはいえ、音楽はとても素晴らしかった。劇場で鑑賞して良かったです。

ではまた。