きねぞう

映画の感想や関連記事を載せていくブログです。

書評:松本人志の【シネマ坊主】を読んでみた!

 

一番好きな映画は何かと聞かれると悩む所だが、ワースト映画は常に決まっている。

松本人志監督作の「さや侍」だ。あらゆる方面で酷い出来であり、僕はこの作品を生涯忘れないだろう。そんな松本人志も、監督になる前に映画評論を出していた。1999年から2008年まで、日経エンタティンメントで連載していた「シネマ坊主」である。単行本として発刊された全3巻の内、今回取り上げるのは第1巻。

 

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謎の花が咲いているのは、図書館で借りた本だから(笑)。

 

「松本節」が随所にきいた内容で、評論は辛口傾向。しかし映画に対する評価の仕方は、意外と真面目。勿論、好き嫌いで「これはいい、これはダメ」と感覚的な部分はあるけど(それはそれで松本人志の映画観を知れて面白いし、読者の一番の興味はそこだろう)、映画に対してきちんと理詰めで捉えている所があって好印象。「こんな映画褒めるのか!」という評もあり、僕も今度観てみようと思う作品がいくつか出来たのも収穫。

「ライフ・イズ・ビューティフル」を激賞していて、10点満点をつけている。僕も大好きな映画なのだが、同じ高評価でも褒める所が異なっていて、勉強になる部分もあった。

 

しかし、登場人物のコスプレをしてスターウォーズを観に行く観客に対して苦言を呈する部分には、僕は反論したい。少し長くなるが、引用する。

 

“彼らは映画を見終わったら、絶対に「おもしろかった」と言いますからね。そりゃそうでしょ。わざわざあんな格好して見に行って、「おもしろなかった」って言ったら、つじつまがあわんからね。あの格好で行ったことが絶対無駄じゃなかったことを立証するために、「おもしろかった」って言いはらんと。内容はどうあれ、見る前から「おもしろかった」って言おうと思ってますよ。”      【シネマ坊主 第1巻 24~25pより】

 

その観客は本当にそういう気持ちで観ているのか、という是非は置いておくとして。

映画というのはそこまでしゃちこばって観るような物ではない。時間潰しに映画でも観るか、くらいの感覚で充分だ。僕みたいに評論家気取りで観るだけが映画では無いのだ。非日常を楽しむ一種のイベント。だから、コスプレをして観に行くのだって全然アリだし、映画の健全な楽しみ方と言える。その楽しみ方に文句を付ける彼は間違っていると言いたい。

それと評論の中で「撮ったこと無いやつが文句言うなと言われたらそれで終わりですが」という部分に対しても文句がある。ぜんぜん終わりじゃない。後に映画監督としてデビューした彼は「撮ってない奴に言われたくない」という旨の発言をするが、ちゃんちゃらおかしい。映画を観る大半の客は、映画なんて一度も撮ったことがないのだから。伊丹十三監督の「たんぽぽ」を観て出直せ!

でも本は面白かった。オススメです。