きねぞう

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映画評:この娘、変なんです!【エスター】

 

こんにちは。

杵蔵(きねぞう)です。

 

今回の作品はこちらです。

 

 

エスター

製作:2009年/アメリカ

監督:ジャウム・コレット=セラ

出演:イザベル・ファーマン

  :ヴェラ・ファーミガ

  :ピーター・サースガード

  :ジミー・ベネット

  :アリアーナ・エンジニア

rating:85点

 

 

ストーリー

三人目の子供を流産させてしまったコールマン夫妻は、その悲しみを癒すために、孤児院から養子を迎えようとする。そこで出会ったのは、聡明で可憐な少女、エスターであった。エスターを引き取り、幸せな日々を送る彼らであったが、次第に彼女は不審な言動や仕草をするようになり……。

 

レビュー

養子として向かい入れた少女が次第に牙を向き始め、家族を支配していく恐怖を描く、ホラー映画の傑作。

謎の少女・エスターの手によって、コールマン一家の家庭というパーソナリティーゾーンをじくじくと追い詰め、蹂躙していきます。彼女が家族の中の異分子として、少しずつその正体を現し始め、家庭を崩壊させていく過程が、丁寧に描写されていると感心しました。これは前提としてコールマン一家の家族の描写がきちんとしているからこそ、彼らに感情移入ができ、起伏あるドラマを生み出している訳です。エスターの持つカードの豊富さ、そしてそれを展開していくディティールの積み重ねが非常に巧みであると感じました。

主人公の母親は、過去にアルコール中毒だったという経歴の持ち主で、それをエスターに利用されてしまう。主人公に弱点があるからこそ、そこを付け込まれてしまうことで、サスペンスはより強く表現できるし、人間だれしも弱い部分や暗い側面を持っているという普遍的な描写にも繋がっていると思います。家族一人一人が、ただ「怖い目に遭う」だけでなく、それぞれの事情や特性でもって、きちんと映画の中に「生きた人」として機能していると感じました。家庭に入り込み、少しずつ家族を支配していく映画には「ゆりかごを揺らす手」が挙げられますが、本作は子供であるために、成人女性ではなく、よりも厄介とも言えるでしょう。社会的に庇護される対象ゆえに、手が付けられないからです。

それだけでなく、本作が優れているのは、こういったホラー映画にありがちな荒唐無稽さ、リアリティの無さに対し、明確なロジックが存在することろ。なぜ、幼い少女がこのような事をやってのけるのか?という理由がきちんと存在し、しかもそれが恐怖と密接に繋がりがあるという点です。こういう所だけ取り上げても非常にフレッシュ作品でしたね。

ではまた。