映画評:【ドラえもん のび太のパラレル西遊記】「おまえは、孫悟空だよ!」
こんにちは。
杵蔵(きねぞう)です。
私はドラえもん映画が大好きです。
当ブログでも、少しずつレビューを書いていきたいと思います。
という訳で、今回の作品はこちら!
ドラえもん のび太のパラレル西遊記
製作:1988年/日本
監督:芝山努
出演:大山のぶ代
:小原乃梨子
:野村道子
:肝付兼太
:たてかべ和也
rating:70点
ストーリー
学芸会で西遊記を演じることになったのび太は、孫悟空役を出木杉に取られてしまう。
孫悟空が実在すると信じていたのび太は、「本物に似ている人が孫悟空になるべきだ」と主張し、単身でタイムマシンに乗り込み、七世紀の唐の時代の中国へ。
そこでのび太は、自分そっくりの孫悟空を発見し……。
レビュー
国民的アニメの劇場版シリーズ第九弾。
ドラえもんのひみつ道具「ヒーローマシン」から西遊記の妖怪たちが流出。人類が滅ぼされその妖怪世界が現代にも波及してしまった事を知ったのび太一行は、パラレルワールドの歴史軸を修正するため、西遊記の英傑に身をやつし、牛魔王率いる妖怪たちと対決する。
ドラえもん劇場版の中でも恐怖演出が群を抜いており、またシリーズが哲学的なテーマが据えられた作品が多い中で、純粋な娯楽度において本作の右に出るものはないでしょう。
さらに注目したいのは物語の構造として大変よく出来ており、ドラえもん劇場版の雛型のような脚本なのです。
私が分析するドラえもんの劇場版の造りは三幕構成で、三分の一はテレビ放映の30分アニメに見られる「日常パート」であり、のび太が未来の道具を使うも調子に乗り過ぎて失敗し、痛い目に遭うというエピソードそのまま。そして残り三分の二は劇場版の本領である「非日常パート」です。
本作の尺は90分ですが、丁度開始30分で「ヒーローマシン」から妖怪たちが飛び出してしまう。妖怪たちが溢れだしてしまったのは、道具を置きっぱなしにしてしまったドラえもん達の過失が原因ですが、この「うっかり放置してしまった」瞬間から第一幕が終了し、第二幕、すなわち劇場版の「非日常パート」へと見事に移行していきます。
このうっかりの軽さに対して世界が一変してしまうギャップの恐怖が秀逸。前述したようにホラー的な演出が多く、公開当時を含めビデオリリースで鑑賞した少年少女に、大小さまざまなトラウマを刻んだことでしょう。
恐怖演出として引き合いに出されるのは、「階段を上って来るのび太ママの素足」や「豹変する学校の先生」の場面ですかね。
しかし、個人的に私が一番怖いの感じた場面は、別にあります。
序盤、西遊記ゲームの世界に入っているのに、敵の妖怪が一行に出現しないまま、ただただもぬけの殻となった牛魔王の宮殿をゆくシーン。異様なワープでステージが省略され、あっさりとクリア画面である天竺に移動してしまうのです。すでに妖怪たちは現実世界にすべて流出してしまった、という伏線の場面なのですが、これが非常に不気味でした。すでに尋常でない何かが進行している、しかしのび太一行はまだそれに気づいていない、というギャップも含めて背筋が凍るシーンです。
ぜひご覧になってください。
ではまた。