きねぞう

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映画評:全てのホラー映画を過去にした【呪怨 オリジナルビデオ版】

 

こんにちは。

杵蔵(きねぞう)です。

 

 

呪怨(オリジナルビデオ版)

制作:2000年/日本

監督:清水崇

出演:柳ユーレイ

  :栗山千明

  :三輪ひとみ

  :小山僚太

  :藤貴子

rating:70点

 

                                         

ストーリー

凄惨な殺人事件の現場となった佐伯家は、足を踏み入れた者を呪い続けていた。呪われた者の怨念は蓄積され、またさらなる犠牲者を生み出す。この呪怨は絶え間なく連鎖を紡ぎながら、なおもその触手を伸ばし続け……。

 

レビュー

オムニバス形式によって、不条理に伝播していく呪いの恐怖を描いた傑作。人気ホラー映画シリーズの開祖であるが、本作は劇場公開がされておらず、東映ビデオより制作された、ビデオシネマです。個人的にはシリーズが続くにつれ恐怖度が薄まっていくため、やはり第一作目の本作が歴代作品でも最高傑作だと感じます。

告白しますが、私は欧米のホラー映画は好んで鑑賞していますが、日本のホラー映画は好きではなかったんです。Jホラーの基礎を確立した「小中理論」によって作られた日本のホラー映画は、何をおいても思わせぶりで、とろくさい。そもそも純粋な恐怖表現と、長編映画は、相反する性質であると思うんですよ。本当の恐怖とは、何かが起きる前に感じる、不吉な予兆の時間、あるいはその後の余韻であって、それを二時間という長時間、ストーリーを描き、起伏を持たせなければならない長編映画とは、食い合わせが悪いんです。

映画として物語を作ろうとすればするほど、純粋な恐怖を持続させるのは難しい。その点、欧米のホラー映画は、脚本が恐怖を盛りみつつ娯楽性も適切に整理され、エンターテイメントとしての潔い提示をしている。だから好感が持てるのですが、日本のホラー映画は、退屈に感じるだけでした。その歴史を変えたのが、本作と言えるでしょう。あまりにも堂々と幽霊が画面に登場するのが特徴であり、一歩間違えばコメディになりかねない所を、絶妙なバランスによって極上の恐怖に仕上げています。オムニバス形式が非常に冴えており、理不尽な恐怖を十分に描写していますね。

また、個人的に好きな所としては、本作、恐ろしいのは必ずしも幽霊だけではないということ。人間の業や執着、狂気といった恐ろしさもきちんと描いており、構造的にもとても優れています。

ホラー映画としての一つの到達点、草分け的存在になったのは間違いない。日本のホラー映画は、本作の以前と以後に分類されて評価しなければならないでしょう。

ではまた。