特集:徹底解析!【ドラえもん のび太と銀河超特急】を語り尽くす! Part2
Part2:ミステリーツアーへ
列車が裏山に到着します。見かけは蒸気機関車ですが、立派な宇宙船。
この時にかかるのが、メンデルスゾーンの「真夏の夜の夢」です。ドラえもん映画でクラシックが使われたには、本作が初なのだとか。列車の動きととてもマッチしています。
自分たちの指定座席に従って、7号車に入る二人。
「うわぁっ、何これ? 外で見るより中は広いんだ?」
「圧縮空間なんだ。個室が5つ。ミーティングルームもついている」
列車が動き出し、裏山を出発する列車。あっという間に大気圏を超え、地球を見下ろしてしまいます。
しずかちゃん、ジャイアン、スネ夫の分も考えて、5つの個室をおさえてくれたドラえもん。毎度の事ですが、彼の財源がどこから捻出されているのか、気になる所ですね。
のび太は1号室へと入ります。個室の中も広く、寝台列車ということもあって備え付けのベッドまでついています。
「ご乗車ありがとうございます。この、宇宙ドリンクを飲みますと、真空や、低温・高温、どんな環境でも快適に過ごせます」
どこからともなくロボット音声が流れ、宇宙ドリンクがのび太の元に運ばれてきます。この宇宙ドリンクが、僕は相当憧れました。ヤクルトに、アルミ箔の蓋の上からストローを刺して「宇宙ドリンク」と称し、よく真似ていたことを覚えています。
机も設置されていて、ボタンを押せば壁が透けて見えて外の様子も観ることができます。
ドラえもんに誘われ、展望車に向かう二人。
「どこなの? 展望車って」
「えーっと、58号車だから……」
「58号車?」
「外見は8両だけど、本当は120両繋がってる」
車両の中を走る二人。のび太がバテてしまい、連結部分の近くでへたりこんでしまいます。ふと窓を観ると、外から忍者がこちらを覗き込んでいました。急いでドラえもんを呼びますが、窓の外からその姿は消えていました。
「宇宙空間に忍者なんて居るわけないでしょ」
外のドアを開けて確認しますが、やはり誰も居ません。というか、このドアがあっさり開くのは危険だと思うんですが。
タケコプターを使って車両をすいすい進み、展望車に着く二人。ガラス張りのようになっていて、外の景色を見渡せるようになっています。通り過ぎていく木星などを眺めます。
「やぁやぁやぁやぁ、地球のお客様ようこそようこそ。早速切符を拝見」
ここで車掌が登場。背が低いため、着ている服がブカブカ。本作のマスコットキャラ的存在です。かわいい。
土星を過ぎたため、列車はワープに入ります。眠くなってきたので二人も個室に戻ることに。
個室に備え付けのトイレで小便をするのび太。すると、洗面所の窓吸血鬼が映ります。急いでドラえもんを連れてきますが、既に窓からは消え去っていました。怖がったのび太は一緒に寝ようと2号車に押しかけ、仕方なく二人一緒に眠るのでした。
翌朝。学校に行くために、どこでもドアで家に戻ります。この非日常と日常を行き来する演出が素晴らしいですね。
「まるで貸し切り列車なんだ。乗り心地、サービス、言う事なし。展望車から観る、木星や土星の素晴らしさ。また今夜が楽しみだなぁ。あ、そういえばみんなのツアー、今夜出発だったね。それじゃぁみんなで楽しんできてね、じゃぁねー」
浮かれているのび太は、列車での出来事をみんなに話して聞かせます。去っていくのび太を見つめる、しずかちゃんとジャイアン。スネ夫がキレます。
「どうして二人とも黙ってるの? 言いたいことがあるんならハッキリ言ったらいいじゃない! あっち行けば良かったって思ってるんでしょ! さっさと行けば!?」
去っていくスネ夫。結構可哀そうです。
その夜。路地で佇む、ジャイアンとしずかちゃん。
「いいから、あっち行こ。俺がさ、のび太に頼んでみるから」
「でも……」
罪悪感からか、あまり乗り気でないしずかちゃん。しかし背中にはちゃっかりリュックサックがある所が狡猾ですね(笑)。
のび太の家に着く二人。
「こんばんはー」
「やぁ」
「おう、心の友。実は頼みが……」
このジャイアンの変わり身の早さには笑ってしまいます。
「わかってる、待ってたんだ。さ、あがってあがって」
優しい笑みをたたえ、二人を歓迎するのび太。
「ママ、みんなで宿題合わせするから邪魔しないでね」
「こんなに遅く、大変ねぇ」
騙されるママも大概です。ここで階段をあがりながら「すいませーん」と謝る、ジャイアンの妙な外面の良さも相まって、なかなか面白いです。興味深いのは、列車に乗る前にこういう描写をきちんと入れていること。こういう何気ない日常描写の積み重ねが、荒唐無稽さを限りなく排除してくれているのだと思います。
のび太の部屋につくと、そこにはスネ夫が居ました。二人より先に、ちゃっかりこちらに乗り換えていたのでした。
どこでもドアで、列車の中に入る五人。
「これが列車の中?」
「まるでホテルね」
「すげー」
感激する三人。しずかちゃんは5号室、スネ夫は4号室、ジャイアンは3号室へ。準備が済んだら展望車に行くことになり、待ち合わせ場所のミーティングルームに一人向かうのび太。
すると、そこに待っていたのは西部劇に出てくるガンマンでした。ピストルで撃たれたのび太は、すぐさま3号車のジャイアンの元に向かい、助けを求めます。ドラえもんは車掌に会いにいくため不在にしていたとはいえ、ここで真っ先にジャイアンに助けを求める所が、なんだかんだと言って信頼しているのだと微笑ましくなります。ここで「怪しい奴なら任せとけ」と言って付いてきてくれるジャイアンも頼もしい。
しかし、案の定、部屋に入るとそこには誰も居ませんでした。
「なぁ~んか変だ。忍者に、吸血鬼に、西部劇。一体なんなんだろう?」
次回に続きます!