きねぞう

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映画評:【新感染 ファイルナル・エクスプレス】ゾンビ映画の新たなクラシック!

 

84点

別居中の妻が住むプサンへ、幼い娘スアンを送り届けることになった父親のソグ。夜明け前のソウル駅からプサン行きの特急列車KTX101号に乗り込むが、発車直前に異様な様子の女性が列車に駆け込んでくる。女は乗務員に噛み付き、噛まれた乗務員もまた凶暴化し始める。感染者は瞬く間に増えてゆき、車内はパニック状態と化すが……。

 

韓国が生み出したゾンビ・パニック映画の傑作。時速300キロで走行する特急列車を舞台に、パンデミックに巻き込まれた人間たちの恐怖と戦いを描く。

主人公のソグは仕事人間でファンドマネージャーとしては優秀だが、家庭を顧みず、妻とは別居状態。幼い娘とも交流は少なく、誕生日プレゼントも以前買ったオモチャを再び贈ってしまうという始末。本作は幼い娘を守り抜きながら、失ってしまった父親の信頼と尊厳を取り戻すヒューマンドラマが通底しており、それは主人公サイドだけでなく、車内で生き残った乗客たちにも感情移入させる人物造形がしっかりとなされている。

 最近はゾンビが走るタイプの映画が主流になりつつあり、本作も例に漏れないが、大量の感染者が狭い車内を埋め尽くし、その塊が津波の様に押し寄せるビジュアルにとても新鮮味がある。乗り物パニック映画の側面としても優れていて、車内の空間を非常に上手く使っている。国中が感染拡大の危機に見舞われている筈だが、列車からでは外の情報が断片的であり、だからこそ恐ろしい。やがて感染者だらけの車両に生き残った乗客が分断されるのだが、どうやって連絡を取り合うのか、合流するのか。車内にある物を駆使して感染者を出し抜いたり戦ったりと、一つ一つの展開に様々なアイディアが詰め込まれている。そして勿論、異常事態にさらされることでパニックになる人間たちの描写にも容赦が無い。