きねぞう

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映画評:【リメンバー・ミー】ラスト15分、涙が止まりません。

 

年に1度だけ、他界した先祖が家族に会いにやって来るという、死者の日。音楽が大好きな少年ミゲルは、先祖代々伝わる音楽禁止の掟に縛られていたが、祭壇から落ちた写真を見つけ、自分の先祖が伝説のミュージシャン、デラクルスだと確信。家族に認めて欲しいミゲルは祭りの最中に彼の霊廟に忍び込むが、デラクルスのギターを手に取り奏でた途端、死者の国に迷いこんでしまい……。

 

カラフルな色彩表現が観ていて非常に楽しい作品。

メキシコのあらゆる文化を映画の中に多彩なアニメーションで落とし込んでおり、冒頭ミゲルの先祖の歴史を、伝統ある切り絵細工・パピルピカドで描く所も実にスマート。

僕は特に、ミゲルと出会い行動を共にするヘクターというキャラクターに心を動かされてしまった。死者の日であっても、現世でその故人の写真がオフレンダ(祭壇)に置かれていなければ、死者は生者の国に帰ることはできない。誰からも写真を置かれていないヘクターは、向こう側の世界から完全に締め出されている。

生と死の境を結ぶ、マリーゴールドが滴るアーチの橋。彼はそこを無理矢理にでも突っ切ろうとするが、渡ることはできない。あがいても、オレンジ色に輝く葉に埋もれてゆくヘクターの姿に涙が出てしまう。

ミュージシャンを夢見るミゲルは、死者に国に迷い込んでしまうが、すぐに先祖の力で帰ることを許される。しかしそれは「音楽はもうしない」という契約付き。音楽への情熱を捨てきれないミゲルはそれを断り、死者の国に居るはずのデラクルスを探す冒険に出る。先祖である彼に「許し」を得て、生者の世界に帰った後も音楽を続けるために。その後にやってくる困難に対して、彼は常に自分の唯一の武器である音楽でそれらを乗り切っていく。音楽が、時間や空間を越えて何かを繋げ、蘇らせる。そういった音楽の素晴らしさを見事に映画的にリンクさせた屈指の名作。

 

89点