きねぞう

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映画評:【マスカレード・ホテル】キムタク、良かったよ。

69点

東野圭吾の小説を原作としたミステリー映画。

都内で3件の殺人事件が発生。現場にはいずれも不可解な数字の羅列が残されていたことから、連続殺人事件として捜査が開始される。警視庁捜査一課のエリート刑事・新田浩介(木村拓哉)は、その数字が次の犯行場所を予告していること、そしてホテル・コルテシア東京が4件目の犯行場所になることを突き止める。犯人を見つけるためホテルのフロントクラークに成りすまして潜入捜査に乗り出した新田は、教育係である優秀なフロントクラーク・山岸尚美(長澤まさみ)と衝突を繰り返しながら、事件の真相に迫っていく。

殺人事件を未然に防ぐ、という基本のストーリーに、刑事がホテルの従業員になってしまうというカルチャーギャップ、厳しくお堅い山岸とのバディ。物語の付録が二つもついていて良かった。

ペーパーウェイトを直す仕草をが山岸の性格を端的に現し、それが後の展開の伏線にもなっているところは秀逸。新田がホテルマンとして成長していく場面も、説明的セリフではなく、新田の行動を中心に描写されていて好感が持てる。今回のキムタクの演技は良かった。小日向文世の存在感もとても良い。新田と比較すると少し年齢差があるが、それが新田と山岸のバディさが際立つ形になり、効果を上げていると思う。

 

原作はどうなのか知らないが、思ったほど「マスカレード感」はない。

「客は誰しもが仮面を被っている」と口では言うが、客の表面と内面のギャップの落差がそれほどないため、そこまで説得力はない。基本的に客は、思ったことを口に出してる。どちらかと言うと、仮面を被っているのは従業員の方ではないか?

「客の言う事が聞けないのか!」とか「客をなんだと思ってるんだ!」という客のセリフは、テレビドラマ的で陳腐。全体的に客の演技はオーバーアクトでリアリティを失っている。客のワガママを全て受け入れることが美徳だという姿勢にも疑問が残った。客が居る場で堂々と従業員が話していたり、一人の客が滔々と語り出す場に、他の客が円座になって聞いているというシュチエーションは、もうちょっと何とかならないのかと思う。しかし短い何気ないシーンだが、新田の高校時代の描写はとても良かった。あの教室の嫌な雰囲気はとてもリアリティがある。

 

クライマックスに向けて盛り上げたいのは分かるのだが、二人の放つ「殺人事件を防げなかったら仕事を辞める」という発言は唐突に感じた。観客の感情移入が追い付いていないというのもそうだし、それで物事の解決にはならないんじゃないかという指摘もできる。

ラストシーンは蛇足だ。新田がホテルを出る所で終わっていればスマートだったものの、その後の展開は余計。そもそもあの二人の関係を安易に恋愛に結び付けるのは興ざめである。この場面は回りくどい上に長い。仮面の演出もあんまり効果が出ていないと思う。

ただ、原作はシリーズ化しているらしく、続編が出たら文句を言いつつ観てしまうかも。今後のキムタク出演作にも期待させてくれた一本。