きねぞう

映画の感想や関連記事を載せていくブログです。

映画評:ホラーだと思ったら騙された【マザー!】

 

こんにちは。

杵蔵(きねぞう)です。

 

今回の作品はこちらです。

 

 

マザー!

製作:2017年/アメリカ

監督:ダーレン・アロノフスキー

出演:ジェニファー・ローレンス

  :ハビエル・バルデム

  :エド・ハリス

  :ミシェル・ファイファー

  :クリステン・ウィグ

rating:35点

 

 

ストーリー

郊外で穏やかな暮らしを送っていた夫婦の家に、謎の男がやってくる。不信感を抱く妻をよそに、夫は客人だと家に招き入れてしまう。その日を境に、次々と夫に会いにやってきた訪問者が続出し始めることに。不思議なことに、それでもなお夫は快く家に迎えるのだが……。

 

レビュー

謎の訪問者たちに自分のパーソナルスペースを侵害されていく姿を描く、サイコスリラー。

はじめにこの映画のポスターを観た時はギョッとしました。

油絵のようなタッチで描かれたジェニファー・ローレンスが自分の胸から心臓を差し出しており、その心臓もシンボルチックなものではなくリアルな臓器として血がしたたり、胸にはパックリとその傷跡が生々しく描かれているのです。そのインパクトある表紙と、タイトルの「マザー!」なるシンプルさ、ジェニファー・ローレンスも好きな女優であること、監督が「レスラー」や「ブラックスワン」を手掛けたダーレン・アロノフスキーであることから、

こりゃぁ、面白そうだぞ……!

脳裏に電流が走ったのです。ロイヤルストレートフラッシュが出せる要素が揃っています。

何かの問題があったらしく日本公開が中止になったと聞いたときは落胆しましたが、思いのほかDVDレンタルの開始が早く、喜び勇んですぐさま鑑賞しました。結果としては……。

 

観たかったのと違う。

圧倒的コレジャナイ感。

 

ロイヤルストレートフラッシュ級のカードを揃えながら、ツーペアくらいしか面白味が出せていない。っていうか、監督は面白く作ろうとしている気持ちがあるのか?

突如として家にドカドカ入り込んでくる闖入者。それに対して妻が「やめて!出て行って!」とリアクションするだけの二時間になっています。起きている出来事があまりにも不条理なのでリアリティがなく、恐怖を感じるというよりは、「どうせ幻覚じゃないの?」と考えてしまう。それだけならまだしも、映画はずっと訪問者がしてくる嫌がらせが淡々と続くだけなので、ただイライラするばかり。ハビエル・バルデム演じる夫はヘラヘラしているだけなので、全く頼りになりません。おまえ、『ノーカントリー』であれだけ人を殺しまくってた冷酷な殺人鬼だったろ!ちょっとはその片鱗を見せろ!と問い詰めたくなります。

同じような設定としては『ローズマリーの赤ちゃん』を彷彿とさせますが、似て非なるものだと私は思いますね。『ローズマリーの赤ちゃん』が秀逸なのは、主人公が精神的に追い詰められていく中で、相手の正体が悪魔なのか、それともただの人間で、自分がヒステリーを起こしているだけなのか、判断がつかないギリギリのラインを絶妙にいっているからです。本作にそんなバランスはありません。ただただ、イライラするばかり。かといって『ファニーゲーム』のようなサスペンス性も薄いため、面白味がほとんどない。

映画解説などを調べると、本作は聖書をモチーフにしているとか。なるほど、観終えてみれば納得しない訳ではない。けれど、それが何?いくら芸術的なメッセージ性があったところで、お話としてつまらなければ意味がない。映画にメッセージを込めるのは悪い事じゃないけれど、それは映画の面白さの基礎が出来ているうえで、その上に乗っかるものじゃないの?それなら映画である必要が無い。私が最初に観てビビッときたポスターだけで充分ですよ。

唯一の救いはジェニファー・ローレンスの美しさのみ。彼女が主演じゃなければもっと点数が低かったでしょう。

ではまた。