きねぞう

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映画評:染谷将太が林業に悪戦苦闘!【WOOD JOB!神去なあなあ日常】

 

こんにちは。

杵蔵(きねぞう)です。

 

今回紹介する作品はこちら!

 

 

WOOD JOB! 神去なあなあ日常

製作:2014年日本

監督:矢口史靖

出演:染谷将太

  :長澤まさみ

  :伊藤英明

  :優香

  :西田尚美

rating:85点

 

 

ストーリー

大学受験に失敗し、彼女にも振られてしまった平野勇気。高校卒業後の進路が決まらない彼の目に、ふと林業研修のパンフレットが目に留まる。その表紙を飾っていた美女の微笑みに惹かれた勇気は、軽い気持ちで、一年間の林業研修プログラムに参加するが……。

 

レビュー

三浦しをんの小説「神去なあなあ日常」を原作とした青春映画。都会育ちの「イマドキの若者」である少年が、山奥での厳しい掟や慣習、林業の過酷な現場に悪戦苦闘しながらも、村人たちや自然との触れ合いを通じて成長していく姿を描く。

矢口史靖監督はすでに、伊丹十三の風格すら感じますね。

マイノリティカルチャーに沿わせて人物の成長を描く手法が彼の常套手段とも言えますが、相変わらず「向こう側の世界」を描くのが非常に上手い!

今回はしっかりとした小説の原作があるので、どこまで監督の裁量で描かれているのかはわかりませんが、我々が普段目にする事の出来ない景色や文化を、丹念に咀嚼し、物語に落とし込んでいく手腕はやはり健在。

素晴らしいのは、登場人物の台詞などを安易に説明的にせずに、映像でもって説得力を持たしている点なのです。例えば、こんな場面があります。作業場に行く際にトラックの荷台に乗せられる主人公の勇気ですが、同じく乗り合わせた男たちが聴いたこともない木挽き歌を歌い始め、その独特な異文化の雰囲気に思わず眉をひそめてしまう。林業の研修も嫌々参加しているため、研修の残り日数をまるで刑務所の刑期のように数えて覚えています。ところが林業に携わる過程で、少しずつ周囲に認められるようになり、やりがいを覚えていくようになる勇気。トラックの荷台では彼が率先して木挽き歌を歌い始めるし、山奥での暮らしに没頭していく内に、研修の残り日数もいつの日か頭から消えてしまうのです。ここで凡百の映画監督なら、非常に説明的な台詞を登場人物にしゃべらせています。きちんと、観客自身が登場人物の気持ちを「読み取れる」ように描く、これが映画的な手法と言えます。

そうした彼の心の変化を巧みに描写しながら、個性的な登場人物や山での豊かな生活を魅力的に描き切った傑作です。

村人たちの生活感もしっかり表現していて、男衆を演じる俳優たちも「最初からそこにいた」感がハンパじゃないです。ぜひ観てください!

 

ではまた。