きねぞう

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映画評:ラストカットにシビれる【狼よさらば】

 

こんにちは。

杵蔵(きねぞう)です。

 

突然ですが、チャールズ・ブロンソンといえば、大塚周夫ですね。

あの渋い声がたまりません。

 

ということで、今回批評するのはこの作品です。

 

 

狼よさらば

制作:1974年/アメリカ

監督:マイケル・ウィナー

出演:チャールズ・ブロンソン

  :ホープ・ラング

  :ヴィンセント・ガーディニア

  :スティーヴン・キーツ

  :ウィリアム・レッドフィールド

 rating:70点

 

 

ストーリー

強盗に妻を殺され、娘を植物状態にさせられた設計士のポールは、未だ事件を解決できない警察に苛立ちを感じていた。

気晴らしに仕事でアリゾナへと出張した彼は、現地に根付く「市民も銃を手に取り悪と戦う」という精神に感銘を受ける。

帰宅後、顧客のガンマニアから土産として届けられた拳銃を手に取ったポールは、夜の町へと繰り出していき……。

 

レビュー

夜のニューヨークを見廻り、悪党を自らの手で処刑していく父親の姿を描いた、社会派サスペンスの名作。

元来、ポールは反戦主義でした。狩人だった父親を銃の事故で亡くした経験を持ち、朝鮮戦争に出兵した時も医療班に志願していたのです。

しかし、妻子の残酷な事件に始まり、警察の不手際、アリゾナでの自警の精神が、彼を次第にハンターへと駆り立てていきます。

こんな風に、動機を一つ一つ積み重ね、その変貌の過程を、本作は丁寧に描写していますね。

 

変化していくのはポールだけではないんです。夜の町で一人わざと襲われ、犯罪者たちを返り討ちにしていくポールの存在は、マスコミにも「幻の狩人」として取り上げられ、市民にも支持されていく。

ポールに感化された彼らは、自警団を組織し、犯罪者たちを自らの手で裁き始めてしままいます。警察は威信をかけてこの「幻の狩人」を捜索しますが、その一方で街の犯罪率の減少を横目にジレンマを感じているのが面白い。

しかし、犯罪率が減少できているとはいえ、市民が自らの手で裁くなど、あってはならない事態です。

個人の数だけ正義はあるのですから、その人の感性によって人を裁くのは傲慢であり、危険なのです。そうした危険な思想が暴走する果ては、テロになってしまう。

だからこそ、人間は法というものを整備し、文明を築いてきた。これでは野蛮な昔に逆戻りです。

 

もう一つ筆者が取り上げたいのは、狩人として次々と悪漢を処刑していくポールの、その憑りつかれた様な姿勢です。

おそらく、彼はもう元の生活には戻れないでしょう。

悪党を退治していくのを辞められない筈です。ある種、呪いともいっていいのかもしれれませんが、それでも、悪党を退治していくことが、彼の人生に精彩を与えてくれるのかもしれません。

果たして彼の呪いが解けるのか?

それは、あの最高に「シビれる」ラストカットを見れば一目瞭然です。

ぜひご覧になってください。

 

ではまた。