きねぞう ~気ままに映画評~

映画の感想を述べていくブログです。

【映画評:ゆれる】あの橋を渡るまでは、兄弟でした。

 

 

こんにちは。

杵蔵(きねぞう)です。

 

今回紹介する作品はこちらになります!

 

 

ゆれる

制作:2006年/日本

監督:西川美和

 

出演:オダギリジョー

  :香川照之

  :伊武雅刀

  :新井浩文

  :真木よう子

評価:A-

■ストーリー

東京で写真家として成功していた早川猛は、母の一周忌のために実家に帰ることに。そこで猛は、家業のガソリンスタンドを切り盛りしていた兄の稔と、そこで働いていた、昔の恋人である智恵子と再会する。久々に顔を合わせた三人は、渓谷へと遊びに出かける。写真を撮っていた猛は二人と行動を別にしていたが、そのとき智恵子が、渓流にかかる吊り橋から転落死してしまい……。

■レビュー

第59回カンヌ国際映画祭にも出品された、転落事件の顛末と、対照的な兄弟の心の動きを描く、人間ドラマの傑作。監督は、鋭い人間描写によって評価を得ている西川美和

写真の仕事で活躍していた弟の猛は、写真家としての才能と、その洒脱な容姿も手伝って、恋愛にも不自由せず、気ままに、自分のやりたい事を謳歌していました。かたや、実家のガソリンスタンドを継いだ兄の稔は、家業のためとはいえ山奥の片田舎に押しとどめられ、独身で浮いた話や縁談もなく、垢抜けた猛と比べると、いかにも風采が上がりません。

稔を演じる香川照之の絶妙な演技力も相まって、いかにも純朴そうで仕事は真面目にこなしそうですが、異性を惹きつける魅力の乏しい、どこか不格好で鬱屈とした雰囲気がまじまじと出ていますね。それが、映像を見るだけで、観客がきちんと把握できる、安易に説明的な台詞を使わずに、登場人物の関係性や心情が、それとなく絶妙なニュアンスで伝わってくるのです。

例えば、映画序盤で法事の場面がありますが、東京の空気が抜けきらず所在なさげにしている猛に対して、稔は参列者にせわしなくお酒を注いで回っているなど、兄弟の異なる人間性を浮き彫りにした、見事なシーンです。

この兄弟の描き分け方も物言わぬ演出で素晴らしいのですが、格別なのが、猛と智恵子の距離感の描き方ですね。猛はほとんど彼女に未練がなく、あっさりとした態度なのですが、智恵子の方は、都会で活躍している猛に執着している。そんな気配を秀逸に切り取っていますね。

そうした、言葉だけでは伝わりにくい、映像のマジックの巧みな積み上げが、抜群な面白さのバランスを生み出しています。この作品は観て気分がハッピーになるような「わかりやすい話」ではありませんが、映画的快感に満ちた傑作ですね。

 

ではまた。