きねぞう ~気ままに映画評~

映画の感想を述べていくブログです。

【映画評:ぼくたちの家族】「とっくにこの家族なんて、ぶっ壊れてんだ」

こんにちは。

杵蔵(きねぞう)です。

 

今回紹介する映画はこちらです。

 

 

ぼくたちの家族

製作:2014年/日本

監督:石井裕也

出演:妻夫木聡

  :池松壮亮

  :原田美枝子

  :長塚京三

  :黒川芽以

評価:

 

■ストーリー

物忘れの激しい母・玲子は検査のために病院へと連れられるが、そこで末期の脳腫瘍と診断されてしまう。

余命一週間とまで宣告され、父と二人の兄弟は騒然。やがて、母の突然の病によって、隠されていた家族の問題が浮き彫りになっていき……。

 

■レビュー

早見和真の自伝的小説「砂上のファンファーレ」を映画化。突然の母の病によって翻弄される父と二人の兄弟の、繊細な家族模様を描く。

母の脳腫瘍が見つかり、今までバラバラになっていた家族が一つにまとまる、という簡単な話にはなってくれない。むしろ、表面上は保っていた家族の均衡が崩れていく。

病室で母の病名を告げられるシーンが秀逸ですね。医者の告知によって、日常から非日常へと突き落とされる訳ですが、「余命一週間」というあまりにも唐突なリミットで、むしろ現実味がない。聞いている父や兄も「えっ?」という感じで、上手く呑み込めないのです。途方に暮れる一方でじわじわと絶望が湧き出すこの場面は、尋常でない事態が既に進行しているのに、状況を把握しきれない奇妙な距離感を上手く捉えています。

物語は基本的に、妻夫木聡演じる、兄の浩介の視点によって描かれています。浩介は引きこもりだった過去を持ちながらも、会社に勤めて結婚し、妻との間に新しい命を授かるなど、人並みの家庭を築き、一人の社会人として自立していた。しかし、母が入院すると、借金まみれの父と、穀潰し同然の弟と力を合わせて、この困難を乗り切らなければならないのです。父と弟のズレた思考や頼りなささが苛立ちを募らせ、借金や医療費の資金繰りに悩まされ、味方である筈の妻も理解されず、やがて浩介は、無力だった少年時代に逆戻りするかのように、次第に追い詰められていく。

特筆すべきは弟を演じる池松壮亮の演技力ですよ。何かを成し遂げた訳でもなく、母親に金ばかりたかるくせに、どこか斜に構えて悟ったような言動は、同年代の俳優・染谷将太とはまた違った、「ぶん殴りたくなる演技」ですね。

この家族にものすごく感情移入しながら見続けていたので、「え~もう終わり?2は?続編は?」と、悶えるほど面白かったです。「映画に置いていかれる快感」という、数少ない、非常に優れた作品だけが持つ余韻を湛えた傑作ですね。

 

ではまた。